【東京】限界耐力計算の「運用は慎重に」 JSCA(3/9)

■  日本建築構造技術者協会(JSCA、大越俊男会長)は、国土交通省が特定行政庁に通知した技術的助言「偽装物件に対する是正措置に関する扱い」に対し、「限界耐力計算による法的適合性の検討は慎重を期すべき」などと指摘する意見書を同省に提出した。性能規定の耐震性能検証法である限界耐力計算と、一般的な計算(保有水平耐力計算)の結果に違いが生じ、混乱の一因となる恐れが強いためだ。
 国土交通省の技術的助言は、住宅局建築指導課長名で2月15日に通知。耐震強度の偽装が発覚した物件について、建築基準法違反を是正するための手順、回収の方法などを示した。この中で、「限界耐力計算などによる安全性の検証をした構造計算書が提出された場合は、特定行政庁が審査し、建築基準法令の規定に適合することを確認した場合はその旨を所有者に通知する」ことを明記した。
 建物の性能規定化は2000年施行の改正建築基準法で導入。限界耐力計算は性能規定で建物を設計する場合に活用する耐震性能の構造計算法で、高層建築物などの多くがこの計算を使って設計されている。
 建物の高さにより一律に基準を定めていた従来の設計法に比べて、限界耐力計算では設計者の自由度が高まり、創意工夫を生かせるようになった。その反面、▽設計者の裁量により、地震力を小さく評価できる▽大地震時での層間変位の制限値が決められていない―といった運用上の課題も指摘されている。
 JSCAは05年9月にこうした状況を踏まえ、「限界耐力計算の問題点」と題するレポートを作成。これを土台とした今回の意見書は、限界耐力計算の運用について、技術的な問題点とともに「偽装物件の一部の建物だけを限界耐力計算法で検討することは、保有水平耐力計算による検討結果に基づき、取り壊しが判断された建物との整合性確保が難しい」などと指摘。両計算の結果の違いについて、「国民への明快な説明が必要」と訴えている。

(2006/3/9
建設ニュース 入札情報の建通新聞社