構造計算書、別業者もデータ改ざん 札幌市、耐震への影響否定  2006/03/16 06:53

 浅沼良一・2級建築士(47)によるマンション耐震強度偽装問題に揺れる札幌市で、別の設計業者もマンションの構造計算書でデータを改ざんしていたことが15日、札幌市などの調べでわかった。同市は「耐震強度には影響は与えない」として違法性はないとの結論を出したが、このマンションの開発業者は「不安のある物件についてそのまま建築を進めるわけにはいかない」とし、新たに設計し直すことも検討している。

 札幌市の田中透・都市局長らによると、問題となっているのは札幌市中央区で建設中の賃貸マンション。民間検査機関・日本ERIへの確認申請では、耐震強度は基準値の一・○を上回っていたが、姉歯秀次・元一級建築士(48)による耐震強度偽装事件などを受け、昨年十二月、日本ERIが再計算したところ「○・八一」となり、構造計算書に入力数値の改ざんが見つかったという。

 国土交通省とも相談しながら一カ月余りにわたった札幌市の調査の結果、設計業者は「限界耐力計算」という方法を使って構造計算書を作成した際、「安全限界時軸力」と呼ばれる入力条件などの数値で改ざんがあり、市は「単純ミスではあり得ないという認識」に達した。

 日本ERIがさらに別の条件で再々計算すると、基準値の一・○を超えたことから市は、「安全基準をクリアしていれば建物に影響を与えず、(データ改ざんは)偽装ではないと考える」とし、違法性は問えないと最終判断した。

 「○・八一」の数値についても、市は、地震の際に建物が変形する程度をより厳しく想定した「理想的な形での一つの計算」としている。

 設計業者が使った限界耐力計算という新しい構造計算法は、使用者の判断の違いで耐震強度について大きく食い違う結果が出やすい特徴がある。

 データ改ざんの理由について、市は設計業者の仕事が立て込んでいたため、複雑な計算にかかる時間を節約しようとしたとみている。

 設計業者は北海道新聞の取材に、データ改ざんについて「何も答えられない」としつつ、「(自分の計算法は)耐力そのものを弱めるものではない。強度は十分満たしている」と語った。この業者は札幌市内を中心に過去十数年で百棟を超えるマンションの構造計算に携わっている。
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060316&j=0022&k=200603161938