都市再生機構マンション、耐震強度は基準の58%

 構造計算書を多数紛失していた独立行政法人都市再生機構(旧都市基盤整備公団)が、東京都八王子市で1989年に分譲したマンション1棟の耐震強度が、最弱部分で基準の58%しかないことが、社団法人・日本建築構造技術者協会(JSCA)の調査で分かった。

 建築確認が免除されている公的機関が建設した建物の設計で強度不足が確認されたのは初めて。また機構はこのマンションの計算書も紛失したとして、「再々計算書」を作成したが、JSCAの分析では、同計算書には柱の強度の水増しなど十数件の不審点があった。事態を重く見た国土交通省は、機構の担当者から事情を聞くなど調査に乗り出す方針。このマンションでは悪質な手抜き工事も判明しており、機構による住宅の信頼性は大きく揺らぐことになりそうだ。

 このマンション(6階、19戸)は機構が88〜92年に建設したマンション群46棟のうちの1棟。構造設計は都内の設計会社に下請けに出されていた。元1級建築士姉歯秀次被告(48)による強度偽装事件をきっかけに管理組合が、機構から提供された構造図の分析をJSCAに依頼。その結果、耐震強度は6階が基準の58%、1〜5階が65%しかなく、補強の必要がある。

 一方、機構は同マンションの構造計算書を「紛失した」として、「再計算書」、「再々計算書」を作成。この再々計算書についても住民側はJSCAに分析を依頼した結果、〈1〉柱の強度を割り増し〈2〉大梁(はり)にかかる力を低減〈3〉床の鉄筋量を過大評価――など十数か所に不審点が判明した。

 これらについて機構は「JSCAの調査結果の中身をよく検討し、対応を判断したい」としている。

 同マンション群では、鉄筋不足など手抜き工事が次々と発覚し、46棟中20棟を建て直す異常事態となっている。問題のマンションは建て替え対象とはなっていないが、手抜き工事も加わって実際の強度は58%を下回る恐れもある。

 国などに準ずる機関とされる都市再生機構は、建築確認を免除されており、計画を自治体に通知するだけで建設に着手できる。今回、強度不足が判明したことで、構造計算書を点検する動きが他の機構マンションにも広がる可能性もある。

(2006年6月2日3時3分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060602i101.htm?from=main1