構造計算数値差し替え 埼玉・千葉のマンション工事中断

2006年06月01日19時53分
 埼玉、千葉県内で建設中の分譲マンションで、構造計算書の内容に不備があるとして、建築主の「アパ」グループ(金沢市)が工事を中断していることが分かった。構造計算を担当した富山市の1級建築士朝日新聞の取材に対し、埼玉県のマンションで構造計算データの一部を差し替えたことを認めた。両県と国土交通省は事実関係の調査を進めている。

 この建築士は、社団法人日本建築構造技術者協会(東京)が「建築構造士」と認定する構造設計の専門家。埼玉県の物件のデータ差し替えについては「時間に制約があり、確認申請時に計算は完了していなかった。現在は正確な計算書に仕上がっている」と説明。千葉県の物件については差し替えを否定している。

 埼玉県の物件は約370戸、千葉県の物件は約130戸の規模。どちらも民間検査機関イーホームズ(確認検査機関の指定取り消し)が建築確認した。

 両県によると、イー社は耐震強度偽装問題の発覚後、改めて建築確認の内容を点検していた中で疑義が見つかったとして、3月上旬ごろ、県側に通報。両県とも安全が確認されるまで工事を中断するようアパに依頼した。

 埼玉県によると、建築士は「忙しかったので、未完成のまま提出した」などと説明したという。

 千葉県の物件では一部内装工事だけ続いているが、主要部分の工事は両物件とも2カ月以上ストップ。アパによると、埼玉県の物件は、既に100件弱の売買契約が結ばれているという。

 アパ側は5月31日、ホームページ上で、一連の経緯を公表した。アパグループ元谷外志雄代表は「当初、建築士は1週間程度で問題は解消できると釈明していたが、イー社との協議が進まず、中断している。契約者には誠意を持って対応したい」と話している。

 国交省は今後の調査で偽装が確認されたり、耐震性の不足が判明したりした場合、この建築士が関与した他の物件も詳しく調査する方針。建物の数や所在地は、すでに調べ始めているという。
http://www.asahi.com/national/update/0601/TKY200606010273.html