住民が耐震強度めぐり提訴へ

2009年06月11日
 射水のマンション 住民側が構造計算
 マンションの耐震強度が不足しているとして、射水市の10階建て分譲マンション(104戸)の住民らが、売り主のアパホームなど3社を相手取り、購入代金返金と損害賠償(計約3億4千万円)を求める訴えを今週中にも富山地裁に起こすことがわかった。住民らが専門機関に構造計算を依頼した結果、耐震強度不足が明らかになったという。
 提訴したのは、射水市中新湊にあるマンション「アパガーデンパレスなかしん」の購入者14戸(19人)と管理組合。マンションの売り主である「アパホーム」(金沢市)と、施工を請け負った準大手ゼネコン「熊谷組」(東京都)、設計や工事の監理を担当した「タムラ設計」(富山市)の3社を被告とした。契約解除をして購入代金を全額返金することと、損害賠償を請求。1戸あたり1500万〜3500万円で、計約3億4400万円の支払いを求める。
 訴状などによると、問題のマンションは10階建て3棟が並んでいる中の1棟で、01年に完成、販売された。07年までにひび割れや雨漏りが見つかったことなどから、住民が外壁の破壊調査などを開始。その後、専門機関「ハウスアンサー」(大阪市)に依頼して、実際の立ち入り検査と竣工(しゅん・こう)図をもとに構造計算を実施した。鉄筋を覆うコンクリートの厚さの不足や、揺れを吸収する「構造スリット」がないことなど、実際の構造が竣工図(完成後の図面)と違うことが判明し、耐震強度不足が発覚したとしている。
 構造計算の結果、建築基準法で定められた基準1に対し、この1棟ではすべての階で1を下回り、最も低い階では数値が0・5未満だったという。また、他の2棟についても、一部で数値が1を下回っていた。設計時に作られた構造計算書は、すべて1を上回る数値が記載されていた。
 住民側はアパホームに、07年から交渉を続けてきたが、話し合いは平行線のままだという。アパホームは「県の建築確認を受けていて安全だ」との主張を譲らず、マンションの建築確認申請書は紛失したとしているという。住民側は、再計算の結果をもとに契約解除を求める書面を送ったが、回答がないために提訴に踏み切ったという。
 今回、構造計算書などに、データの偽造などは確認されていないという。
 「公正な計算か疑問」
 タムラ設計、住民側の根拠に
 今回の提訴について、タムラ設計は「訴状を見ていない段階で、詳しい主張の内容は分からない」としたうえで、住民側が主張の根拠とする構造計算結果に疑問を呈した。
 住民側が示した構造計算の結果では、基準の1を大きく下回る数値が出た。しかし、同社によると「この数字は非常にあいまいなもので、構造の見方によって、数値は大きく変わってくる。今回の計算は、住民側の業者が計算したもので、公正な計算結果であるのかについて疑問が残る」としている。
 今回の訴訟を巡っては、提訴前に住民側とアパホーム側で、双方の選んだ業者で構造計算を実施し、公正な結果を得ようとする動きがあった。だが、両者の話し合いがまとまらずに実現しなかった。
http://mytown.asahi.com/toyama/news.php?k_id=17000000906110002