「3K不況」に突入した鉄鋼業界

商品部 竹蓋幸広(12月9日)
 鉄鋼業界が「3K不況」に突入した。「金融」不安で輸出が急減する一方、国内では「建設」の不振に「車」の減産が需要を先細りさせる。衝撃の度合いは日産自動車が調達先を絞った1990年代後半の「ゴーン・ショック」を上回りそうだ。
 いち早く需要が鈍ったのが建設分野。昨年の改正建築基準法の施行に加え、鋼材高と住宅市場低迷が需要を冷やした。
 10月からは好調だった輸出にブレーキがかかる。根底にあるのは金融不安。米金融機関の資金引き揚げで新興国が自国通貨安に陥り、輸入抑制の動きが広がった。日本の鋼材輸出は「新規商談が成立しない」(東京製鉄)異常事態だ。
 先行きの最大不安要因は自動車の失速だ。鉄鋼メーカーは自動車用の鋼材価格を他用途より低く抑えてきた。他業界からは「自動車優遇」とうらやむ声が聞かれた。
 その自動車各社も減産のアクセルを踏み込んだ。若者の車離れはガソリン価格が下がっても変わらず、軽自動車シフトが進めば1台当たりの鋼材消費は落ちるとみるのが自然。ゼネラル・モーターズ(GM)に至っては米国が救済できるのかどうかすら分からない。
 鉄鋼メーカーは「中級・高級品の価格は需給だけでなく、商品価値や顧客への提案力を勘案して決まる」(新日本製鉄)と強調する。だが高い車や住宅が売れない時代がくれば、高級鋼材も多く売れないかも知れない。過去の成功体験にこだわっている余裕はない。
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