井上工業破産 下請け250社の連鎖懸念 群馬

2008.10.17 03:11

 県内建設大手で東証2部上場の建設業、井上工業高崎市和田町、中村剛社長)と子会社1社は16日、東京地裁に破産開始手続きを申し立て、開始決定を受けたと発表した。負債総額は井上工業と子会社あわせて約125億円。県内の建設業界では、平成19年の「佐田住宅センター」(負債総額約140億円)に次ぐ規模といい、県経済界には「負の連鎖が続くのでは」と危惧(きぐ)する声が広がっている。

 「井上工業は歴史が長い企業。取引企業の裾野が広く、しわ寄せが来ることが心配だ」。前橋商工会議所の曽我孝之会頭は、同社の破産の報を受け、影響をこう吐露した。信用調査会社「東京商工リサーチ」などによると、井上工業の下請けは約250社に上り、うち約100社が県内にあるとみられ、同リサーチは「下請け会社の連鎖倒産につながる恐れがある」と警戒感を強める。

 同社は昭和4年の設立。経営悪化に伴い、平成12年以降、金融機関からの債務免除を受け経営再建を進めてきたが、19年6月の改正建築基準法施行や米サブプライムローン問題に端を発する不動産市況の悪化で、資金繰りが悪化。

 第三者割当増資などを決め、払い込み期日の先月24日に割当先から全額18億2000万円の振り込みが行われたものの、同日、部長職の従業員が無断で第三者に15億2000万円を流出させていたことが発覚。資金繰りのめどが立たなくなり、今回の申し立てとなった。同社はこの従業員を告訴する方針。

 近年は業績が悪化していたとはいえ、高崎白衣大観音、群馬音楽センターなど、群馬の顔となる建物の数々を手がけ、長年にわたり、県内建設業界を牽引(けんいん)してきた企業だけに、影響の長期化を懸念する声も。

 高崎商工会議所の原浩一郎会頭は「文化面などで力を入れ、代々の社長が大きな役割を果たしてくれた。心理的なさびしさが大きい」とコメント。別の関係者は「今後、雇用や個人消費にも波及する可能性がある」とまゆをひそめた。
http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/gunma/081017/gnm0810170313000-n1.htm