風力発電、6割以上が計画遅れ 耐震基準の厳格化で

2008年04月02日03時01分

 耐震強度偽装事件を契機にした建築基準法の改正で、風力発電の新設計画の6割以上が大幅に遅れたり、中止に追い込まれたりしていることが、経済産業省の調査でわかった。一般の超高層ビルと同じ厳しい耐震設計が義務づけられたためだ。風力発電は新エネルギーの柱で、国は10年に設備量を出力300万キロワットに増やす目標を掲げているが、達成は厳しくなった。
 経産省によると、06、07年度に国の補助金を受けた風力発電59計画のうち、39計画が耐震設計に入れなかったり、国の耐震審査で立ち往生したりしている。

 このうち19計画は予定工期内の着工、完成が難しく、補助金を新年度に繰り越す手続きをした。また、6計画は変更や中止に追い込まれた。

 原因は、姉歯秀次建築士による耐震強度偽装事件を受けて改正、昨年6月に施行された建築基準法だ。風力発電設備も高さ60メートルを超える場合、超高層ビルと同じ耐震審査が課せられた。

 100年以上に1度の大地震でも損傷・倒壊しないか、実際の地震波も使って計算、設計することが義務づけられた。1基ごとに建設地の地盤調査も必要になった。その結果、大半の計画で費用がかさんだり、審査を通る見通しがたたなくなったりしている。

 約20基の建設を予定する西日本の計画では、地盤の調査、解析費だけで新たに数億円が必要になったという。

 それまで風力発電設備は広告塔や遊園地の施設などと並んで「工作物」とされ、一定の風圧などに耐える設計であれば建設が認められた。

 日本の風力発電の設備量は07年末現在154万キロワットで、政府目標の達成には今後3年間で倍増させる必要がある。今回、補助金の繰り越し手続きをした19計画分だけで設備量は約40万キロワットにのぼり、影響は大きい。

 風力発電の関連企業でつくる風力発電事業者懇話会は「業界全体が困惑、混乱している。山の中にある風力発電設備も、人が住む超高層ビルと同じ基準にすべきなのか、現実的に判断して欲しい」として、近く国土交通省に規制の見直しを申し入れる。

 経産省も、これまで日本であった風車の倒壊は、台風や設備の維持不良が原因と指摘。「風車が地震で倒れた例は一度もない。風力発電については建築基準法の弾力的な運用ができないか、国交省と協議したい」(新エネルギー対策課)という。

 これに対し、国交省は「強風で風車が倒壊する事故も起きており、耐震面でも超高層建築物並みの規制が必要だと判断した。過去の地震で倒壊していないから問題ない、とは言えない」(建築指導課)としている。(石田勲、編集委員・竹内敬二)
http://www.asahi.com/business/update/0401/TKY200804010423.html