薄まる不正防止効果 建築審査は一部緩和 小嶋社長判決

2008年03月25日15時10分

 耐震偽装事件を受けて建築確認の仕組みは大きく変わった。国土交通省は昨年6月、建築基準法を改正し、建築確認手続きを厳格化。偽装事件に対する危機意識を反映した「過去最大規模の改正」(同省)は、住宅着工のかつてない減少を招き批判が集中した。しかし、着工数は今年に入って持ち直しており、事件の影響は表面上、目立たなくなっている。

 厳格化の柱は二つ。マンションなどの構造計算の再チェック機関の新設と、構造計算書の作成に使う大臣認定プログラムの改訂だった。

 再チェックが加わった分、確認手続きに要する期間は1〜2カ月程度長期化し、住宅着工は法改正後の昨年後半、前年比2〜4割減と大幅に落ち込んだ。「過剰な厳格化」「官製不況」との批判を受け、同省は一転して、審査態勢の一部緩和を図った。このため、今年1月には前年同月比5.7%減まで回復。経済産業省と連携した中小企業への融資限度枠の引き上げなどによる支援策もあり、関連業界に大きなダメージは広がっていないとみられる。

 一方、改ざん防止機能を盛り込むためのプログラムの改訂は、同省の仕様決定が遅れたため、民間による開発が進まなかった。「確認手続き迅速化の切り札」と位置づける同省は「NTTデータ」の開発作業に協力する異例の措置を取り、2月に第1号の認定をしたが、同業他社からは不公平だとの批判も出ている。

 「いつのまにか住宅着工の回復に主眼が置かれ、偽装防止という本来の目的がどこかへ行ってしまった」。厳格化後の流れについて、構造計算事務所幹部は国交省の対応をこう批判。プログラムメーカー幹部も「手続きが煩雑になっただけで、姉歯建築士のような『故意犯』を防げるかといえば、残念ながらその保証はまったくない」と言い切る。
http://www.asahi.com/national/update/0325/TKY200803250264.html