<構造計算>1級建築士が偽装…10都県46物件、調査へ

10月15日20時48分配信 毎日新聞


 国土交通省は15日、横浜市西区で建設されていた分譲マンションで、構造計算の偽装が見つかったと発表した。販売前に建設が中止され、横浜市耐震強度を調べている。構造計算をした「藤建事務所」(埼玉県八潮市)の遠藤孝・1級建築士(60)は、横浜市の調査に対して「時間がなかったので偽装した。ほかにも数件ある」と話しているという。建築士が偽装を認めたのは、姉歯秀次・元1級建築士(50)=東京高裁で公判中=に次いで2例目。

 遠藤建築士は、判明しているだけで10都県46物件の構造計算をしており、各自治体が再計算を急いでいる。

 偽装されたのは「積水ハウス」(大阪市北区)が建築していた「グランドメゾン横浜紅葉坂」(仮称、鉄筋コンクリート9階建て、5棟)で99戸が入居予定だった。設計者の「松田平田設計」(東京都港区)が構造設計を委託した「構造計画研究所」(中野区)から、藤建事務所が再委託された。6月18日に着工したが、民間の住宅性能評価機関が構造計算書を点検し、8月末に「偽装の疑いがある」と同省に通報した。

 判明した偽装は167カ所。うち161カ所は地震の際に破断する恐れのある耐力壁や柱を、破断しないものとして入力。6カ所は耐力壁の断面計算で「NG」(不可)となった部分に「OK」(可)の文字を切り張りしていた。

 3月に建築確認申請され、民間確認検査会社「東日本住宅評価センター」(横浜市鶴見区)が6月12日に建築確認した。構造計算のチェックを厳しくした改正建築基準法施行(6月20日)を控えた時期で、遠藤建築士横浜市に「(改正法施行までに)時間がなかった。つじつま合わせでやった」と説明しているという。

 国交省によると、遠藤建築士の関与が判明している物件は▽東京14▽神奈川11▽埼玉9▽千葉5▽岐阜2▽茨城、長野、福井、鳥取、愛媛各1。38物件が共同住宅、6物件が公共建築、飲食店と老人介護施設が各1物件。このうち最も古い建築確認は96年9月。遠藤建築士は埼玉県の調査に対しては、89年以降、マンションを中心に67件の構造計算をしたと説明している。【高橋昌紀】

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 今回の問題に対し、積水ハウス広報部は「藤建事務所とは取引がなく、初めて名前を知った。問題の指摘を受けた時点で自主的に工事を中止しており、今後、設計を一からやり直す」としている。松田平田設計横浜事務所は「藤建事務所に再委託されたことは知らなかった。建築主に対して、また社会的に責任を痛切に感じている」と説明している。

 構造計画研究所によると、遠藤建築士は約20年前に同社から独立。同社コンプライアンス部は「自主検証では必要な耐力がある構造設計と判断している。過去5年間、遠藤建築士への委託は他になく、偽装への関与は一切ない」と説明。また東日本住宅評価センター担当者は「見落としがあった。大変申し訳ない。対策委員会を設置したい」と話している。【鈴木泰広、鈴木一生】

最終更新:10月15日20時48分
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