車・PCの廃熱 冷却に利用…同大教授らメーカーと開発

小型化で来年実現めど

 車やパソコンなどから出る廃熱のエネルギーを冷房・冷却に使える装置を同志社大学の渡辺好章教授らが開発し、自動車、電機メーカーなどと協力して2008年中に実用化するめどがたった。熱エネルギーを音エネルギーに転換する「熱音響現象」を応用した技術で、実験では温度を約40度下げることに成功し、小型化も実現した。環境に有害な冷媒を使わない、次世代の省エネ冷却システムとして注目を集めそうだ。


 冷却装置は、ループ上につなげたパイプの途中2か所に、「スタック」と呼ばれるフィルター状の部品を挟むだけの簡単な構造だ。スタックの素材には、小さな穴が無数にあいたセラミックを使った。

 一つ目のスタックに熱を加えると音が出る。熱音響現象で熱エネルギーが音エネルギーに変わったためだ。パイプオルガンのパイプを修理のため加熱すると大きな音が出ることや、湯を沸かした時に釜がうなるような音を発する吉備津神社岡山県)の神事「鳴釜(なりかま)」も同じ現象だ。

 この音が、パイプを伝わり次のスタックを通過する際、細い穴を通る間に小さくなる。この時に一つ目のスタックと反対の現象が起こり、二つ目のスタックの出口周辺から熱エネルギーを奪って入り口の方に伝えるため、出口の温度が下がる。こうした音の循環を繰り返すことで、周囲の空気や水を冷やす仕組みだ。

 渡辺教授らが、文部科学省の知的クラスター創成事業「ネオカデンプロジェクト」の一環として5年ほど前から開発を進め、研究室レベルでは20度の空気をマイナス20度程度まで下げることに成功した。A4サイズより一回り大きい程度まで小型化し、車などに装着できる見通しとなった。将来はさらに小型化し、パソコンへの搭載も目指す。

 今後、さらに多くのメーカーに共同研究への参加を呼びかけ、それぞれの機械に合った設計を進める。
(2007年1月21日 読売新聞)
http://osaka.yomiuri.co.jp/eco_news/20070121ke01.htm