耐震偽装防ぐ第三者審査、30道府県で専門家不足

2006年11月15日08時00分

 耐震強度の偽装を防ぐために新設される構造計算の第三者審査(ピアチェック)をめぐり、47都道府県のうち30道府県が、チェック役となる専門家の確保が困難か、必要な数を満たせない恐れがあるとみていることが朝日新聞の調査で分かった。審査に必要な高度な専門知識を持つ人材が地方に少ないのが主な理由だ。ピアチェックは偽装事件をきっかけに検討された再発防止策の目玉。来年6月までの導入が決まっているが、専門家の確保が難航すれば、円滑な建築確認の業務に支障を来すほか、質を維持できない恐れも出てきた。

 国土交通省が昨年11月17日に強度偽装を公表してから1年になるのを機に調査した。

 ピアチェック制度は今年6月に成立した改正建築基準法に盛り込まれた。高さ13メートル超の木造や20メートル超の鉄筋コンクリート造りなどの建物の建築確認にあたって、申請された内容を「構造計算適合性判定機関」が専門家同士の立場で互いに審査し合う仕組み。判定機関は都道府県知事が指定し、日本建築構造技術者協会(JSCA)認定の建築構造士や、構造設計専攻の研究者を「判定員」に想定している。

 47都道府県に確認したところ、37都府県が判定機関設置で構造計算書の偽造を「防止できる」と回答し、導入への期待が高いことが分かった。

 ところが、判定機関指定の準備が進んでいるかについては、すでに指定先が「決まっている」と答えたのは秋田、埼玉、愛知、兵庫、福岡など10県。判定員確保の見通しについて、「確保できる見通し」と回答したのは11都県だった一方、「域内での確保は困難」が新潟、島根、長崎など11県、「不足する恐れがある」は北海道、岐阜、京都、大分など19道府県にのぼった。

 判定員の能力を持つ人材は都市部に集中しており、国交省は「県外の機関を指定しても問題ない」としている。しかし、自治体側は「首都圏の一部機関に指定が集中すれば審査件数が多くなって業務が滞るのではないか」「地元に指定機関を置けなければ設計側と審査側が対面するにも時間や費用の負担が大きい」と懸念している。

 全国に2500人余いるJSCA認定の建築構造士は首都圏に集中している。しかも、大半が実務家で、何人が判定員を引き受けるかは未知数。建築構造士の数がもともと少ない地方の自治体にとっては、首都圏の判定機関に頼らざるを得ない状況だ。
http://www.asahi.com/national/update/1114/TKY200611140449.html