船係留用の鉄骨つり上げ中、送電線に接触…停電事故

 東京・千葉の都県境を流れる旧江戸川で14日朝、クレーン船のアームが送電線に接触し、首都圏が大規模な停電に見舞われた事故で、クレーン船の乗組員らが千葉県警浦安署の調べに対し、「船を係留するために川底に打ち込むH形鉄骨をクレーンでつり上げていたところ、送電線に接触した」と説明していることがわかった。

 接触事故現場のすぐ下流の両岸には、送電線の存在を知らせて注意を促す看板も設置されており、同署は、安全確認を怠ってクレーンを上昇させた経緯などについて、器物損壊などの容疑での立件を視野に、乗組員らから事情を聞いている。

 同署や船を管理する「三国屋建設」(茨城県神栖市)によると、クレーン船は、接触事故現場から約500メートル上流にある千葉県浦安市発注の浚渫(しゅんせつ)工事現場に向かうため、午前6時半ごろ、東京都江東区の新木場貯木場を出航。同7時過ぎ、東京湾側から旧江戸川に入り、約1キロ航行した地点で事故が起きた。

 クレーン船には、現場指揮官(43)とクレーンオペレーター(34)の男性社員2人が乗船。先導するタグボートに船長(23)が乗っていた。河口付近の「舞浜大橋」下を通過する際などは、クレーン(長さ33メートル)やスパッドと呼ばれる係留用H形鉄骨(長さ約12メートル、30センチ四方)を船上に寝かせていたが、浚渫工事現場に近づいたため、船体の前後部3か所に開いた穴にスパッドを入れ、川底に打ち込む準備にとりかかったという。

 これまでの調べに対し、オペレーターらは「舞浜大橋より上流に送電線などがあるとは知らず、安全と思ってクレーンを上げた」と話しているという。三国屋建設によると、クレーン船などを航行する際には、航路上の架橋や架線など危険個所の出航前チェックを社員に課しているという。しかし、今回は、こうしたチェックが的確に行われていなかった可能性があり、同社で内部調査を進める方針。

 浚渫工事は、今月1日、浦安市指名競争入札で大手ゼネコン「大林組」が受注、三国屋建設が下請けをしていた。当初、15日に着工する予定だったが、前日にクレーン船を現場に係留し、大林組側が三国屋建設側に現地での説明や注意を行うことになっていたという。

 浦安市は「信じられない事故。捜査の進展などをしっかりと把握し、慎重に対応していきたい」としている。

(2006年8月15日3時0分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060815it01.htm?from=top