鹿島など数社、受注の謝礼9億円 武田薬品元役員側に

2006年07月04日06時04分
 総工費210億円にのぼる製薬大手「武田薬品工業」(本社・大阪)の光工場(山口県光市)建設工事をめぐり、大手ゼネコン「鹿島」(本社・東京)など受注業者数社が03〜04年ごろ、総額約9億円にのぼるリベートを「受け皿会社」に支払っていたことが東京国税局の税務調査で分かった。国税局は、当時の発注責任者だった武田薬品元副社長側の働きかけなどを受けた受注各社が、委託料などを装って支払った受注謝礼で、課税対象の交際費にあたると認定。受注各社に重加算税を含め総額数億円を追徴課税した模様だ。

 追徴されたのは、100億円以上で光工場を受注した鹿島や、下請けとして約15億円の空調設備工事などを請け負った「新菱冷熱工業」(本社・東京)など数社。

 受け皿となっていたのは、いずれも建設関連の「タイシン」(東京都港区)と「エクスト」(大阪市西区)など。

 関係者によると、鹿島などは受注金額に応じてその数%を業務委託料や外注費名目でタイシンなどに支出。その額は鹿島が6億円余、新菱が約1億6千万円にのぼるという。

 しかし、国税局が調べたところ、委託や外注の実態がなかった。タイシンとエクストはもともと休眠状態の赤字会社で、光工場の工事の時期に買収された。買収には武田薬品元副社長の知人が関与していたとされる。

 さらに委託料や外注費は、この元副社長側の働きかけに応じて鹿島が受注目的でタイシンなどに支払い、新菱など下請けも鹿島側の意向を受けて支払いに応じたという。

 このため、国税局は鹿島や新菱などが払った金はリベートであり、タイシンなどはその受け皿会社で、元副社長と事実上一体と認定した模様だ。

 支払いに応じたのは、拠点が同じ大阪のゼネコンが有利とされる武田薬品発注の大規模工事を、東京に本社をおく鹿島などが受注するための営業活動の一環とみられる。

 税法上、累積赤字を抱える法人は一定の条件を満たせば、収入と過去の赤字(欠損金)を相殺できる。タイシンなどはこの制度を使い、リベート収入を相殺。法人税などを負担せず、収入をほぼそのまま社外に流していたという。

 しかし、国税局は実態のない債務を計上しているとして欠損金を認めず、タイシンなどにリベート収入を含め計20億円超の申告漏れを指摘。流出資金の行方についても調査を進めているとみられる。

 光工場は46年建設の武田の国内最重要拠点。同社は、海外生産体制の強化と国内拠点のスリム化のため、湘南工場(神奈川県藤沢市)を3月閉鎖し、医療用医薬品の生産を光工場に集約した。

 取材に対し、鹿島は「税務に関してはお答えできない」、新菱は「コメントは控えたい」としており、武田薬品は「何のことかよく分からず、現時点ではノーコメント」としている。
http://www.asahi.com/national/update/0704/TKY200607030389.html