中央区 構造再計算せず

事件発覚後国交省指示
 耐震強度偽装事件で、元一級建築士姉歯秀次被告(49)が「最初に構造計算書を偽造した」と供述した東京都中央区のマンションについて、一連の偽装問題発覚後に国土交通省が指示した構造計算書の再計算が行われていない可能性が高いことが十六日、分かった。同区はこれまで「建築主側で再計算した」と説明。それをもとに、国交省への報告や報道発表で「偽装はなかった」と事実と異なる説明をしていた。

 中央区は同日、偽装の事実を正式に確認し国交省に報告。再計算が行われなかった経緯について詳しく調べている。

 このマンションは一九九七年、同区が建築確認した。建築主は区内の開発会社で、姉歯被告が構造計算を手掛けた。

 昨年の耐震偽装問題発覚後、国交省姉歯被告がかかわった物件について、構造計算書を再計算して検証するよう関係自治体に指示。同区は昨年十二月、このマンションについて「建築主側で再計算を行い、構造安全性を確認した」として「偽装なし」としていた。

 その後、警視庁などの合同捜査本部の調べに対し、姉歯被告が「最初に偽装したのは九七年の中央区のマンション」と供述。捜査本部の調査で、強度が基準の62%しかないことが判明した。

 供述が報じられた後の今月七日にも、区は「建築主から昨年十二月八日に提出された資料のチェックや構造安全性についての報告内容をもとに、偽装は認められないと認識している」と説明していたが、開発会社は東京新聞の取材に「区に求められて建築確認の時の構造計算書を提出しただけで再計算はしていない」と説明。同区の中島俊明都市整備部長は「当時、区も開発会社も再計算をしていなかった可能性が高い」と認めた。

 区は、あらためて点検を始めたが、再計算したはずの構造計算書は見つかっていないという。

 中島部長は「(再計算しないまま報告した)状況を非常に重く受け止めている。混乱していたとはいえ、適切に対応できなかった点は深く反省する」と話している。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060617/mng_____sya_____007.shtml