耐震偽装公表3か月前、建築士が木村建設に指摘

 耐震強度偽装事件で、元1級建築士姉歯秀次被告(48)による構造計算書改ざんを国土交通省が公表する約3か月前の昨年8月、「木村建設」子会社の「平成設計」が、佐賀県にある姉歯物件のビジネスホテルについて、福岡市の1級建築士から強度不足の恐れを指摘されていたことが18日わかった。

 また木村建設元社長・木村盛好被告(74)が、昨年10月に同社元東京支店長・篠塚明被告(45)から強度偽装について連絡を受けた直後、社内に「姉歯を使うな」と命じた文書を配布していたことも判明。文書を押収した捜査本部では、木村被告が、姉歯物件の危険性に早い段階で気付いていた結果、この文書の配布につながった可能性があるとみて調べている。

 木村被告の指示文書が配られたのは、「サンホテル奈良」(奈良市)の工事代金の残金約2億2500万円が振り込まれる前だった。このホテルは「総合経営研究所(総研)」が開業指導していた。捜査本部は、木村被告の指示や1級建築士の指摘が総研に伝わっていたかどうかが、総研関係者の詐欺容疑での立件の可否を決める焦点とみて調べを進めている。

 構造設計専門の福岡市の1級建築士によると、木村建設が設計・施工した姉歯物件、「セントラルホテル伊万里」(佐賀県伊万里市)の構造計算書を昨年夏、平成設計の担当者から示され、データを仮入力して計算したところ耐震強度不足の結果となった。

 このため1級建築士は同8月、平成設計の担当者に電話でこの事実を伝え、「詳細な検討が必要だ」と警告したという。

 一方、木村被告は昨年10月27日、篠塚被告を通じ、姉歯物件の強度偽装を知らされた。この直後、木村被告名で、同社が新たな建物を施工する際には、構造設計には「姉歯を使うな」などとする文書が、関係部署に配られた。

 捜査本部では、この文書が社内に配布された時点で、木村被告や、同建設のホテル施工部門の責任者だった森下三男容疑者(51)が、サンホテル奈良の建物の危険性を十分認識していたと判断。その約2か月前、平成設計が偽装の指摘を受けたこととの関連などについて調べている。

(2006年5月18日15時57分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060518it11.htm