大阪・城東の分譲マンションが強度不足…補強工事指示

 大阪市は11日、城東区の分譲マンションが強度の不足状態にあり、震度6強の地震で一部損壊する恐れがある、と発表した。構造計算で数値の入力ミスがあり、審査を担当していた民間の指定確認検査機関「日本ERI」(本社・東京)が誤りを見落としていたことが判明。市は同日、建築主に対し、早急に補強工事をするよう指示した。耐震強度偽装などによって各地でマンション、ホテルの強度不足が判明するなか、関西で強度不足のマンションが確認されたのは初めて。

 市によると、2004年11月に建設された鉄筋コンクリート造りの11階建てマンション「アルティスタ大阪城東」(全23戸)。販売価格は2200万〜3000万円。建築主は「日本リート」(大阪市)で、「三谷滋伸建築事務所」(同)が設計を手がけたが、構造計算は市内の建築事務所に下請けに出したという。

 市の調査では、横揺れに対する耐震力である保有水平耐力の指数が、最も低い4階で0・61。最高でも0・91どまりで、全階で建築基準法の耐震基準(1・0)を下回っていた。

 ただ、震度5強で倒壊の恐れがあるとされる0・5を下回っていないことなどから、市は「補強工事で修復可能」と判断。使用禁止命令は出さなかった。補強工事中の仮住まいを求める住民には、入居要件を緩和するなどして、市営住宅の空き室を貸し出す方針。

 構造計算を担当した建築士は「致命的なミスを犯して建物で一番大事な安全性に問題を残し、誠に申し訳ない」と謝罪。日本リートは「全く単純なミスで申し訳ない。誠心誠意対応したい」、日本ERI・広報IR部も「結果として住民の方々にご迷惑をかけ、申し訳なく、反省している」としている。

 日本ERIは、姉歯秀次・元建築士(逮捕)による耐震強度偽装事件で耐震偽装を15件、見落としていたことが発覚。事件を機に日本リートが独自に、自社物件の構造計算書再計算を外部に依頼した結果、ミスが判明した。連絡を受けた日本ERIが3月、大阪市に報告し、市が専門家による検証委員会を設置して耐震強度を精査していた。

 ◆住民「ショックだ」

 マンション住民からは不安や怒りの声が上がった。

 3LDKの部屋を2500万円で購入した男性会社員(23)は「今後、補強などするのならすぐにやってもらいたい。信用して買っているので、驚いたというよりもショック」と訴えた。

 住民によると、4月27日に業者から「昨日、強度不足が判明したので説明会を開きたい」と連絡があり、同28、29両日に住民説明会が開かれた。住民側からは「今後どういう対応をするのか」といった声や、「単純な入力ミスというが、素人にはわかりにくい」との不満も漏れ、話し合いは約2時間にわたって続いたという。昨年2月に入居したという別の男性会社員(30)は「今後の生活が不安。強度不足の物件となり、資産価値が下がってしまうのではないか。退去した場合、補償してくれるのだろうか」と心配そうに話していた。

(2006年05月12日 読売新聞)
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20060512p201.htm