耐震偽装、初期ほど巧妙 国交省、姉歯物件の調査終了

2006年03月31日03時04分

 耐震強度偽装事件で国土交通省は30日、姉歯秀次元1級建築士が設計した204物件の偽装の有無の調査が終わったと発表した。偽装があった建物は完成済み85件、未完成13件の計98件だった。全体像が見えてくるにつれて、偽装の開始時期や設計の依頼者との関係など、昨年12月の国会での証言と一致しない点が次々に出てきた。

 ■第1号は?

 姉歯建築士は昨年12月の衆院の証人喚問で、最初の偽装は98年、東京都大田区のマンション、グランドステージ(GS)池上だと証言した。だが、喚問後、GS池上より建築確認申請の日付が10日早い偽装マンションが川崎市で見つかった。木村建設の関与のないこのマンションが偽装第1号であれば、同社からの圧力を偽装の動機に挙げた国会証言と矛盾する。ただ、どちらが最古か決定づける書類を川崎市が保存していないため、真相はやぶの中だ。

 ■指示に疑問

 証人喚問で姉歯建築士は「木村建設の支店長の指示がほとんど」と、偽装に同社の関与があったことを証言した。

 だが、偽装98件のうち木村建設や同社子会社の平成設計が全くかかわっていない物件も30件以上にのぼり、偽装の初期のものも含まれている。

 ■直前は単純

 「プロが図面を見れば明確にわかる」。国会証言で、姉歯建築士は自らの偽装の手口をこう述べた。確かに発覚直前の偽装は、正規の構造計算書の前半部分と不正な計算書の後半部分を張り合わせただけの単純な手口だった。

 だが、初期の偽装は巧妙だった。コンピューターによる構造計算の途中の数値を、印字の時点で不正なものに差し替えていた。国交省は「紙面上での点検だけでは、偽装の発見は不可能」と判断、専門家による点検を中心に、構造計算書の審査を根本的に見直すことになった。

 偽装の見過ごしは、民間検査機関のずさんな審査が主な原因とみられたが、偽装98件のうち自治体の見過ごしも29都府県市区で41件にのぼった。政府は今月31日、緊急対策として建築基準法建築士法など4法の改正案を閣議決定し、今国会に提出する予定だ。
http://www.asahi.com/national/update/0331/TKY200603300515.html