東海地震、ひずみ蓄積は想定以下…名大グループ推測

 東海地震の発生予想地域で、地震を引き起こす地殻の「ひずみエネルギー」は、従来考えられていたよりもたまっていない可能性が高いことを、名古屋大学の鷺谷威・助教授らの研究グループが突き止めた。

 測量結果の分析から、安政東海地震(1854年)以後の約50年間、プレート(板状の岩盤)が強くくっつかずに、滑る現象が起きたと推測されるためで、31日から名古屋市で始まる日本地震学会で発表する。

 東海地震震源と予想される駿河湾沖では、陸側のプレートと海側のプレートの一部が強く固着、一緒に沈み込むことでひずみエネルギーをためる。これに伴い、地表では静岡付近が沈降し、浜名湖付近が隆起する地殻変動が観測される。

 鷺谷助教授らは、名古屋〜沼津間約240キロでの国土地理院による測量結果を〈1〉1884〜1901年、〈2〉1895〜1931年、〈3〉1977〜2001年の3つの期間で分析した。

 〈2〉と〈3〉の測量では、この地殻変動が確認される一方、〈1〉では、静岡付近はほとんど変動せずに、逆に名古屋付近が沈降する現象が起きていたことがわかった。

 安政東海地震後の50年程度は、海と陸のプレートの固着が回復せずに、海側のプレートだけがずるずると沈み込む「余効すべり」と呼ばれる現象が起きていたと推測されるという。

 東海地震を巡っては、150年以上の空白期間があり、1940年代に東南海、南海地震が起きた際にも駿河湾沖の岩盤が破壊されていないことなどから、切迫性が高いとされてきた。

 今回の研究は従来の議論に一石を投じそうで、鷺谷助教授は「この地域のプレートの沈み込み速度は元々、紀伊半島沖や四国沖などと比べて半分以下。余効すべりが長期間起きていたとすると、ひずみの蓄積は思ったより少なく、東海地震が単独で発生するとは考えにくい」と話している。

(2006年10月21日14時32分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20061021it06.htm?from=top