サムシング 福岡市営住宅も「偽装」 構造計算書 市指摘、公設で初

 福岡県春日市の設計会社「サムシング」(二〇〇二年廃業)が耐震強度を偽装したとされる問題で福岡市は八日、同社が構造計算した同市営住宅数棟について、「構造計算書の偽造があった」ことを明らかにした。同市の再計算で建築基準法の耐震基準は満たしていたが、市は専門機関に依頼するなどして、安全性を詳しく調査している。これに対し、同社の仲盛昭二元社長は「データは差し替えたが偽造ではない」と反論している。

 ●元社長「設計変更」と否定

 国土交通省によると、一連の耐震強度偽装問題で、国や自治体が発注した建物の偽装が指摘されたのは、全国で初めて。

 福岡市によると、市が偽装と判断したのは一九九一年―二〇〇一年に建てられ、同社が構造計算したことが判明した市営住宅十九棟のうちの数棟。民間の建築士が設計の元請けとなり、構造計算を同社に発注した。

 市は、同社が提出した構造計算書の設計時の入力データを使い、同社と同じコンピューターソフトや計算方法で再計算した。その結果、建物の柱や梁(はり)にかかる重さのデータなどで、構造計算書に記された結果と食い違いが見つかった。

 市は、同社が何らかの理由で構造計算書の一部を不正に差し替えたと推定、「耐震強度を偽装したとしか考えられない」と指摘している。同社が構造計算し、市が二月に偽装を指摘した民間マンション三棟と、同じ手口の偽装とみている。

 一方、市の再計算で、この市営住宅数棟は耐震強度には問題のないことが分かった。市は日本建築構造技術者協会(JSCA)に依頼するなど、さらに精査している。

 仲盛元社長は西日本新聞の取材に対し、「設計の変更に伴い、問題ない部分を裁量で差し替えただけ」と説明。市が二月に指摘した民間マンション三棟と、福岡県が四月に「データの差し替えがあった」とした同県内の民間マンション四棟と合わせ、「偽装の意図はない」としている。

 市発注の建物で偽装と判断したことについて、市建築局は「誠に残念。安全性の精査を急ぎたい」としている。

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 ●福岡県再調査の5棟差し替えか サムシング物件

 福岡市から耐震強度偽装を指摘されている福岡県春日市の設計会社「サムシング」(二〇〇二年廃業)が構造計算を請け負った建築物について、福岡県が構造計算をやり直したところ、新たにマンションなど五棟の共同住宅の元データと一致しなかったことが八日、明らかになった。県は共同住宅の建築主に安全性の再検証を求める方針。

 県は同社が構造計算をしたマンションや県有施設など十二件を対象に、同社と同じソフトを使って再計算した。このうちデータが一致しなかった五棟は、耐震強度の基準「一・〇」を満たしていなかったとみられるが、ただちに退去措置などが必要な「〇・五」は上回っていた。

 県の再計算で発覚したデータの不一致は、今回を含め九件。県は「データが差し替えられた疑いがあるが、構造計算の偽造があったかどうかは、現時点では分からない」としている。

[2006年05月09日付 朝刊]
http://www.nishinippon.co.jp/news/2005/1117gizou/