グループホーム全焼:建物に構造的な欠陥が浮上 長崎

 長崎県大村市で今年1月、認知症高齢者グループホーム「やすらぎの里さくら館」が全焼し、入居者7人が死亡した問題で、この建物に構造的な欠陥がある疑いが「日本グループホーム学会」(事務局・東京都小平市)の検証で浮上した。建物は、耐震偽造事件で捜査対象になっている総合経営研究所(総研、東京都千代田区)と、木村建設熊本県八代市、破産手続き中)系列のコンビで建築。外壁のコンクリートが空洞だらけで鉄筋がむき出しになっており、建築基準法違反の可能性もある。

 03年9月に開設した「やすらぎ」は鉄筋コンクリート一部木造平屋建てで、床面積279平方メートルで、お年寄り9人が暮らしていた。先月21日、施設の解体に合わせて、同学会の1級建築士らが検証を実施したところ、火災で断熱材が溶け落ちて露出したコンクリート外壁は空洞だらけで、直径20センチに及ぶものも複数あった。また、建築基準法では、鉄筋を覆うコンクリートは厚さ3センチ以上と定めているが、鉄筋が縦1メートルにわたりむき出しになっている個所もあった。

 設計・施工は大村市内の建築会社。木村建設木村盛好社長が取締役で、昨年11月、耐震偽造事件の発覚直後まで、木村建設の地元営業所の看板を掲げていた。

 「やすらぎ」に用いられたのは、総研が日本に導入したAAB工法。「型枠(発泡スチロール製)を外す手間が省けて、工期の短縮、コストダウンにつながる」と、コンサルタント相手の木村建設などに売り込んでいた。しかし、型枠を外さないため、コンクリートの打設状況を視認出来ない欠点がある。空洞ができた原因は、型枠の固定が甘く、生コンの圧力でたわんでしまい、液状成分が外部に漏れ出し、砂利などの骨材だけが残ったためとみられ、この施工不良は「ジャンカ」と呼ばれる。

 検証写真を分析した東京大大学院の野口貴文助教授(建築防火工学)は「重大な施工欠陥で、空洞付近のコンクリートの耐力はないに等しい。発泡スチロールは軽すぎるので、膨らまないよう固定する施工技術がないと鉄筋もずれる。鉄筋が腐食して経年劣化が進めば、耐力はさらに低下する」と指摘する。

 これに対し、大村市内の建築会社は「施工はきちんとやっているので、ジャンカが起きるなどということは絶対にない。コンクリートを流し込む際も、上から確認しながら作業している」と反論。また、総研は「捜査機関から報道機関とは接触しないよう言われており、取材に応じられない」としている。【鈴木梢】

 <AAB工法>

 アドバンスト(進んだ)オルタナティブ(取って代わる)ベター(より良い)の略。木板などの型枠の代わりに、発泡スチロール板を内側と外側に立てて四方を囲み、鉄筋を立てて生コンクリートを流し込み外壁を作る工法。固まった後も発泡スチロールは取り外さず、そのまま断熱材として活用する。カナダで地下構造物用に開発された。

毎日新聞 2006年4月7日 3時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060407k0000m040165000c.html