八王子の都市機構マンション、欠陥10棟改修手付かず

 都市再生機構(旧・都市基盤整備公団)が東京都八王子市で分譲したマンション群で、大規模な手抜き工事が最初に見つかってから今年で10年となる。

 全46棟のうち、20棟は全面的な建て替えとなり、16棟は補修工事が終わっている。しかし、残る10棟248戸は機構側と住民側との交渉が平行線をたどり、改修方法も決まっていない。機構は既に300億円以上を補償につぎ込んでいるが、全面解決への道筋は見えない。

 5棟では約10年前から雨漏りやひび割れが発生。機構は2004年、「セメントの接合などに不具合があった」との調査結果を示した上で、補修を行うことで住民側と協定書を交わした。ところが、その後、建て替えが決まったマンションで鉄筋不足などの深刻な欠陥が判明。住民は態度を硬化させ、協定の白紙撤回や壁を壊して鉄筋数などを確認する抜本調査を求めた。

 7回目の会合で、機構は「協定書で合意した以上の調査はできない」と従来の主張を展開。3時間半の押し問答の末、物別れに終わった。住民の一人は「調査に応じないのは、新たな欠陥が明るみに出て、建て直しを余儀なくされるのを恐れているためではないか」と不信感を募らせる。

 一方、残りの5棟でも、住民側の反発は強い。このうち2棟は機構が構造計算書を紛失した上、作り直した計算書にも誤りがあることが判明。機構は昨年、ようやく当初設計に問題があることを認めたが、住民側は協議の場につくことを拒んだままだ。

 マンション群の当初の建設費は約200億円。機構は2005年度末までに、建て直しや補修費などに265億円、住民の仮移転など引っ越し費用約40億円、現地事務所の維持費31億円と、計335億円を投じている。

 このほか、住民との交渉や建て替え工事の監督のため職員約50人を常駐させており、人件費もかさむ。また、機構管理の賃貸住宅などに仮移転中の住民は約330世帯に上り、機構はその分の家賃収入も失っている。交渉が長引くほど財務負担は膨らむばかりだ。

 国土交通省住宅局の幹部は「解決が長引き、協議のテーブルにもついていない住民がいるのは機構側の責任だ。住民に改めて謝罪して協議の土壌をつくるべきだ」と話している。

 同機構は「解決に向けて努力しているが、交渉の内容については言えない」としている。(地方部 畑武尊)

(2007年4月7日14時40分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070407i4w7.htm