建築士免許の更新制を検討 耐震偽装で国交省が防止策

 千葉県市川市の建築設計事務所によるマンションなどの構造計算書の偽造を受け、国土交通省は、再発防止策の一環として建築士免許の更新制導入を検討する。今回の問題では、構造計算を依頼した元請けの設計会社6社の建築士らも書類の偽造を見過ごしていた。今の制度では、免許は一生有効だが、建築士の能力を定期的に確認するなどの新たな対策が必要と判断した。

 国交省が検討するのは、自動車運転免許のように一定期間ごとに研修や適性検査などを求め、倫理面や能力を調べ直す仕組み。国交相の諮問機関、社会資本整備審議会の専門部会で年内にも具体策を協議し始める。国交省佐藤信秋事務次官は「こうした事態が二度と起きないよう、建築士等の諸制度を総点検したい」としている。

 建築士には1級、2級、木造の3種類があり、いずれも、実務経験や専門教育の後、国家試験に合格すると免許を得られる。しかし、現行では、仮に技量が落ちても資格は有効なままだ。

 建築士の仕事は近年、それぞれの得意分野に特化することが多くなっているとされる。建物全体の設計と、骨組みの構造設計を別の建築士が手がけ、全体を設計する建築士の中には、構造設計や構造計算の知識が不十分な人もいるという。

 国交省は特に1級建築士については、すべての人が、今回のような構造計算書の偽造を見抜けるよう、構造設計についても一定レベル以上の知識を持つ必要があるとしている。

 1級建築士の数は現在約27万人。国家試験を受けるには、2級建築士は4年以上、大学の建築・土木学科の卒業生は2年以上、短大・高専卒業生は4年以上の実務経験が必要になる。高さ13メートル、延べ床面積300平方メートルを超える鉄筋コンクリートのマンションは1級建築士でないと設計できない。

 1級建築士が問題を起こした場合は、中央建築士審査会の同意により、免許取り消しや業務停止の処分を受ける。人数がほぼ同じである医師の場合、処分件数は年40件程度あるのに対し、1級建築士の業務停止は年約10人、取り消しは過去16年で5人にとどまっている。

http://www.asahi.com/national/update/1124/TKY200511230283.html